江戸時代、山間の集落葛野には「いつきひめ」と呼ばれる巫女がいた。よそ者ながら巫女の護衛役を務める青年・甚太は、討伐に赴いた森で、遥か未来を語る不思議な鬼に出会う――江戸から平成へ。刀を振るう意味を問い続けながら途方もない時間を旅する鬼人を描いた、和風ファンタジー巨編
以下、ネタバレ有りですのでご了承ください
タイトルの通りに鬼の話。
たくさんの鬼が出て来ます。
ある意味、鬼の生き様、鬼の生きる理由、鬼の矜持。
長い時間生きる鬼の、その生の物語。
転生ものがファンタジーの大部分を占めている昨今。
この話はある意味逆です。
一瞬の転生で違う世界に飛ぶ話とは真逆に、
大昔──
ある理由で鬼になったために、長い長い時間を一人で生きてきた鬼の、時代を乗り越え、その世界に溶け込みながらただ生き抜いてきた男の物語。
事の起こりは村が鬼に襲われ、愛した少女が殺され、自分が鬼を倒したけれど自分も鬼になり、自分の妹が発端だったと知り、鬼となった妹を追いながら自身も長い年月を彷徨う物語。
江戸から平成までの長い果ての物語です。
最初の最初。
村での子供時代からの話から、14巻に来るまでに、誰もが知るように世の中はまるで別物です。
その中身は鬼とはいえ一人の人間?がその変わる中で生き抜くさまが鬼退治よりも興味深いです。
刀を振るう初期設定……なのに時代が変わってもやはり刀を振るっている。
その反面、姿は高校生で携帯電話で友人に連絡もする。
そのちぐはぐで、けれどちゃんと時代の中に溶け込んでいる。
彼の半生と言うには長すぎる話はとても興味深く、またその生きてきた時代でちゃんと人間関係を築き、失い、哀しみも寂しさも受け止めながら、妹を退治するという信念を忘れない、曲げない、その生き様に感銘します。
アニメ化されるようですが、その主軸はアクションなのかも知れない。
異能を使ったアクションは派手さも有り、迫力があります。
小説を読んでもそうだと思います(私自身はAudibleで聞きました)
それでも私が注目するのは彼の生き様。
彼の人間性です。
そして彼の周りを彩る人間や鬼たち。
登場人物ひとりひとりに生き方が有り、愛し方が有り、死に方がある。
明治時代編が一番好きかな。
一度別れた鬼たちとまた時代が変わってめぐり逢ったり、平成編は学園ものとしてもまた大変面白いです。
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