御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇!
以下、ネタバレ有りですのでご了承ください
私はこのシリーズが大好きなんですが、このシリーズは主人公が独特なので中には眉をひそめて受け入れられないと思われてる方も居ると思います。
この主役弁護士は子供時代に幼女を殺して首などをあちこちにばら撒いた猟奇殺人を起こしているのです。
その後更生して弁護士になる。
その経緯(いきさつ)もシリーズの中で語られます。
エンタメは自由であってほしいと思っています。
賛否はあってもいい。
でも私が眉をひそめるのは、たまに何かあったときに、読んでいた本とか見ていたアニメなどを個別に晒して攻撃されることがあることです。
確かに影響されたのかも知れません。
しかしそれは犯罪を犯した個人の問題であって、個別の"物"のせいではありません。
たった一つの可能性のためにすべてを潰していくのなら、それはそれこそアニメPSYCHO-PASSの世界の、"犯罪係数"の世界なのかも知れません。
想像や空想から創られるエンタメの中では、あり得ないかも!と言うことがあり得ていいのだと思います。
むしろあり得ないことを有ったように思わせるのがエンタメの力です。
現実とフィクションはちゃんと分けて考えてほしいと思ってます。
だからこんなヒーローがいてもいいし、むしろいて欲しい。
どんな立場におかれても、立ち上がり、やり直せると信じさせてほしい。
このシリーズはぜひとも最初の作品から読んで欲しいです。
ミステリーの常で一冊で解決してるためにナンバーが振られていない作品なのですが、何故なんだと私は思ってしまいます。
ミステリーの事件そのものは確かに解決してるのですけれど、このシリーズを通して御子柴の過去が語られ、世間から非難を浴びながら今もなお、彼は精神的に成長してるのです。
すでに中年のオジさんなのですが、彼は子供の頃にある意味精神を病んでいた。
感情を失っていたので、年齢ほどは成熟してないのだと思うのです。
そんな彼が弁護をしながら自分の内側と向かい合って自分を見つめ直すのが好きです。
人間だからこそこうでなくちゃと思うのです。
先ほどミステリーと言いましたが、意外とミステリーの王道からは外れています。
大概は犯人が分かっていて彼に弁護の依頼が来ることから始まるからです。
そこから彼の証拠探しor証拠崩しが始まるのです。
本人は弁護相手が悪でも構わないと思っている。
何故なら自分こそが悪だから。
けれど悪でも法律で決まっているのだから弁護をして何が悪いとも思っている。
弁護士とはそういうものだと何度も語っている。
裁判が進むと犯人が別にいたり、誰かを庇っていたりと、もちろんどんでん返しもあります。
しかしむしろミステリーというよりもヒューマンドラマだと思ってます。
それも感動するヒューマンでは有りません。
人間の根底にあるどす黒い物を見せるヒューマンドラマです。
最終的にはある種の感動を覚えますけど。
私はそこが気に入ってます。
良く出来てるなぁとも思う。
正直言えばご都合主義も多い。
でもそれを超えて人間ドラマが楽しみなのです。
海外ドラマのLaw&Orderのように前半が警察が関わる事件勃発。
後半は裁判が舞台。
その間、御子柴が証拠や証人を探し、依頼相手すら騙して事件を暴きます。
中山七里の作品やシリーズは多く、いろいろ読んでますが、このシリーズが一番好きです。
ダークヒーローが好きな人なら是非読んで欲しいです。
あくまで架空の話だと思えばこんなに面白いキャラクターは居ません。
シリーズを読み進めるにつれて御子柴の過去の心情もプラスされて明かされるので更に楽しみです。
よく問題になる事件の加害者、被害者の家族問題もシリーズ全編を通してのキーワードです。
何しろ彼の家族こそ加害者家族として一家離散しているからです。
そして自分を更生させてくれた恩師を、父とも思い敬っている彼の人間らしさに安心します。
普段知ることのない、裁判への手続きや進行、犯罪を犯した未成年たちをどんな風に教育してるのかなど、過去に読んだミステリーとはひと味違う内容です。
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